1. Mission to Pluto 徹底レビュー:オメガの看板とスウォッチの真実
オメガとスウォッチのコラボレーション、「MoonSwatch(ムーンスウォッチ)」は、時計業界に未曾有の衝撃を与えました。特に、冥王星(Pluto)をテーマにした「Mission to Pluto」モデルは、クリームとバーガンディ(またはレッド)の強烈なツートンカラーで、他のモデルとは一線を画す個性を持っています。
私はこの「Mission to Pluto」を福岡のスウォッチ直営店で購入することができました。店員さんからは「福岡ではMission to Plutoが実は一番売れているんですよ」という意外な情報を聞きました。その理由は、落ち着いたカラーが多い中で、このポップでアイコニックな配色が、特にファッション感度の高い層に響いているからでしょう。
しかし、この時計を語る上で避けて通れないのが「質感」です。
1-1. 「オメガ」の文字を信じるな!質感は100%スウォッチ
まず、結論から述べましょう。
この時計には「OMEGA」のブランド名が大きく入っていますが、商品としての質感は100%、スウォッチだと言っても過言ではありません。
ムーンスウォッチの素材は、スウォッチが開発した「Bioceramic(バイオセラミック)」です。これはプラスチックをベースにした素材で、手にした瞬間の感触は非常に軽いです。オメガの本格的なスピードマスターのような、金属が持つ重厚感、ひんやりとした硬質な質感は、一切ありません。
- 重さ: 想像以上に軽く、高級時計の「ズッシリ感」を期待すると完全に裏切られます。この軽さこそが、カジュアルウォッチの証です。
- 触感: セラミックという名前からは想像しにくいかもしれませんが、触感は「硬めのプラスチック」に近いです。光沢があり、プラスチック特有の少し「ぬるっと」した優しい表面処理がされています。
「オメガ」の時計を買ったという感覚で手に取ると、間違いなく期待外れに感じるでしょう。しかし、「スウォッチのポップでタフな遊び心」という観点で見れば、この軽さと質感は完璧な正解です。
1-2. それでも「OMEGA」の文字がもたらす風格
では、この時計の魅力はどこにあるのでしょうか。それは、ポップなデザインの中に「OMEGA」の文字があるという、このミスマッチの妙に尽きます。
何も知らない人がこの時計を見たとき、彼らが最初に認識するのは「スウォッチ」というロゴではなく、間違いなく「OMEGA」というロゴです。
- 周囲の反応: 友人や知人に時計を見せた際、「オメガだ!」と反応する人はいても、「スウォッチだ」と指摘する人はほとんどいませんでした。
- デザインの力: スピードマスターのデザインを忠実に再現しているため、遠目には本格的なクロノグラフに見えます。そこに「OMEGA」のロゴが鎮座していることで、ポップなデザインにも関わらず、妙な「風格」や「オーラ」が生まれているのです。
この「風格」は、触ってみるまで質感なんてわからないという前提に立っています。この時計は、所有者だけが知る秘密のギャップを楽しむ、究極のファッションアイテム、またはオモチャとして完成されているのです。
2. Mission to Pluto の詳細スペックとデザイン解説
「Mission to Pluto」は、他のムーンスウォッチにはない、極めて特徴的なカラーリングを持っています。
2-1. カラーリング:バーガンディとクリームのインパクト
Plutoモデルの最大の特徴は、ケースとベゼルのクリーム色(薄いベージュ)と、文字盤とタキメーターのバーガンディ(暗めの赤)の組み合わせです。
パーツ | カラー | 特徴 |
---|---|---|
ケース/リューズ | クリーム | わずかにピンクがかった温かみのある白。肌なじみが良い。 |
文字盤/ベゼル | バーガンディ | 非常に落ち着いた暗めの赤。高級感があり、秋冬のファッションに映える。 |
サブダイヤル | クリーム | 文字盤から浮き出るように配置され、視認性が高い。 |
針 | 赤と白 | クロノグラフの秒針は赤で、アクセントになっている。 |
このカラーリングは、宇宙の惑星をテーマにしている中でも、最もファッション性が高く、ストリートやカジュアルな装いと相性が良いと評価されています。
2-2. ディテール:スピードマスターの継承
細部に目を凝らすと、このコラボの遊び心と、オメガの歴史に対する敬意が見て取れます。
スピードマスターの遺伝子
デザインのベースは、NASAのミッションで採用された伝説的な「スピードマスター・ムーンウォッチ」の非対称ケースです。
- タキメータースケール: ベゼルには、スピードマスターの特徴であるタキメータースケールが刻まれています。
- ドット・オーバー・ナインティ(DON): 一部のMoonSwatchには、ヴィンテージのスピードマスターに見られる「90」の数字の上にドットがあるDON(Dot Over Ninety)のディテールが再現されています。Plutoモデルもこのディテールを受け継いでいます。
- ケースバック: ケース裏側には、冥王星の写真と共に、電池蓋にスウォッチ特有の「S」マークが彫刻されています。
これらのディテールは、本格的な時計愛好家(ワニパチ/ウォッチマニア)をも唸らせる、「オメガのオマージュ」として非常に完成度が高いと言えます。
3. Mission to Pluto は買うべきか?モデル比較と購入ガイド
「Mission to Pluto」は他の人気モデルと比較して、どのような立ち位置にあるのでしょうか。そして、購入を検討している人が知っておくべきことは何でしょうか。
3-1. 人気モデルとの比較:Moon vs Pluto
最も人気が高く、実売価格も高騰しやすいのが「Mission to the Moon」です。この2モデルを比較することで、Plutoモデルの特性がより明確になります。
比較項目 | Mission to Pluto | Mission to the Moon |
---|---|---|
カラー | バーガンディ/クリーム | グレー/ブラック |
印象 | ポップ、ファッショナブル、個性的 | モノトーン、オリジナルに近い、シック |
着用シーン | カジュアル、ストリート、遊び着 | ビジネス(許容範囲)、普段使い、汎用性高 |
相場(高騰度) | Moonに次ぐ人気。色味が好みなら買い。定価は41,800円 | 最も人気が高く、常に高値で取引される。 |
結論として:
- 「オリジナルに忠実なものが欲しい」「飽きが来ないものがいい」という方は「Moon」が第一選択です。
- 「どうせなら遊びたい」「ファッションのアクセントにしたい」「色で個性を出したい」という方には、「Pluto」の個性的なカラーリングは最高の選択肢となります。福岡の店員さんのコメント通り、個性を求める層に響く魅力があるのです。
3-2. 価格と市場:定価と実勢価格の現実
定価
ムーンスウォッチの定価は、現在(2025年時点)も30,000円台後半で設定されています。この価格帯は、スウォッチの時計としては高めですが、「オメガ」のロゴが付いた時計として見れば破格です。なおMISSION TO PLUTOの低下は41,800円です。
実勢価格(転売相場)
「Mission to Pluto」は、一時期の異常な高騰は落ち着いたものの、供給が不安定なため、新品未開封品は定価を上回る価格で取引されています。
特に、バーガンディの色味は秋冬のファッションとの相性が良いため、季節の変わり目には価格が上昇する傾向が見られます。
3-3. どこで買える?購入のチャンス
ムーンスウォッチは、原則としてスウォッチの限られた直営店(ブティック)のみで販売されています。オメガブティックでの取り扱いはありません。
- 購入方法: 直営店での「ゲリラ販売」が基本です。再入荷の情報は非公開で、店頭に並んだら販売開始というスタイルが続いています。
- 筆者の体験(福岡): 私が購入した福岡の店舗でも、「いつ入荷するかは私たちにもわからない」という状況でした。何度も店舗を訪れるか、朝から並ぶなどの根気が必要です。オンライン販売は稀に実施されますが、競争率は極めて高いです。
4. 総括:「遊び」と「格」を両立した究極のコラボ
4-1. Mission to Pluto のメリットとデメリット
メリット (魅力) | デメリット (留意点) |
---|---|
OMEGAの風格 | 質感は100%スウォッチ (プラスチック感が強い) |
唯一無二の色味 | バーガンディはファッションを選ぶ (汎用性はMoonに劣る) |
破格の価格設定 | 直営店での購入難易度が非常に高い |
圧倒的な話題性 | 傷や汚れがつきやすい (バイオセラミックの特性) |
遊び心あるデザイン | 防水性は低い (日常使いレベルの3気圧) |
4-2. 最終結論:Mission to Pluto を買うべき人
「Mission to Pluto」は、純粋な「高級時計」を求める人には向きません。しかし、以下の要素に魅力を感じるなら、これ以上の時計はありません。
- 「オメガ」のロゴをカジュアルに着けたい人
- スーツではなく、Tシャツやパーカーに合わせて、誰もが知るブランドの「格」を遊びとして取り入れたい人。
- ファッションの「ハズし」アイテムを探している人
- 派手な色(バーガンディ)を使いながらも、ベースが由緒あるスピードマスターのデザインなので、大人でも許される「ハズし」として活用したい人。
- 最高の「オモチャ」を手に入れたい人
- 3万円台で、オメガの歴史と遊び心が詰まった、「誰もが欲しがるオモチャ」をコレクションに加えたい人。
結論として、Mission to Plutoは、時計の「質感」より、人生の「楽しさ」や「ファッション性」を追求する人にこそ、最高の相棒となるでしょう。
個人的にはめちゃくちゃ買ってよかったですし、気軽にはめれるのでかなりヘビーユーズしてます。
スウォッチがどれぐらいのヘビーユーズに耐えられるのかは心配ではありますが(笑)