テラフォーマーズ、話を忘れたので整理する①
BUGS2編
『テラフォーマーズ』は面白い。でも、ひとつ大きな問題がある。
話を忘れる。
登場人物は多い。手術ベースも多い。国ごとの思惑も絡んでくる。途中から「この人、どこの班だっけ?」「この能力、誰のだっけ?」ってなるのは避けられない。
しかも22巻が2018年、23巻が2024年と6年の空白がある。そりゃ忘れる。
というわけで、後から読み返して思い出せるように、大きなストーリー単位で整理していく。第1回は、すべての原点ともいえるBUGS2編。
厳密には火星に最初に向かったのはバグズ1号だが、単行本1巻の中心で後の物語に直接つながるのはBUGS2編なので、ここから始める。
BUGS2編ってそもそも何だったか
舞台は西暦2599年。人口増加と資源問題を背景に、人類は火星を次の居住地にしようとしていた。そのために取った手段が、火星への苔とゴキブリの投入。この時点でかなり攻めた設定だ。
しかし500年後、火星で待っていたのはただのゴキブリじゃなかった。人間大に進化し、圧倒的な身体能力を持つ存在。それがテラフォーマーだ。
バグズ1号の悲劇が先にある
BUGS2編に入る前に、バグズ1号の話は押さえておきたい。火星へ向かったバグズ1号は到着直後にテラフォーマーに襲われて全滅している。ジョージ・スマイルズがテラフォーマーの頭部を地球へ送ったことで、地球側は「火星に異常な存在がいる」ことを知る。
にもかかわらず、その後に送り込まれたBUGS2のメンバーのほとんどは、ゴキブリが進化していることを知らされていなかった。
ここがかなりきな臭い。英雄として選ばれたわけじゃない。事情を抱えた人間たちが、正確な情報も与えられないまま火星に送られた。この構図が、BUGS2編の底に流れる不快感の正体だと思う。
BUGS2計画の中身
BUGS2計画は、火星に大量繁殖したゴキブリを駆除・清掃するための計画で、乗組員は15人。「火星の厳しい環境で任務を遂行するため」という名目で、全員がバグズ手術を受けている。これは後のANNEX1編で行われるM.O.手術とは別物だ。
人型に進化したゴキブリに対抗するために、人間側も昆虫の力を借りる。この発想が『テラフォーマーズ』らしいところ。
小町小吉と秋田奈々緒
BUGS2編の感情面の中心は、小町小吉と秋田奈々緒の2人だ。小町は正義感が強く熱い男で第1部の主人公。奈々緒は小町の幼なじみ。最初は「この2人が中心になっていくのかな」と思わせる作りになっている。
でも違う。奈々緒は、火星到着後かなり早い段階でテラフォーマーに殺される。能力を十分に使えないまま、あっさりと。
初見だとこれはかなりくる。ヒロイン枠に見えるキャラが、見せ場を作る間もなく死ぬ。ここで読者は気づく。この漫画、主要人物っぽく見えるキャラでも普通に死ぬ。
奈々緒の死は小町の原点になり、後の展開にずっと影を落とし続ける。
テラフォーマーが怖い理由
BUGS2編のテラフォーマーは、後のANNEX1編ほど複雑な能力バトルをしてくるわけじゃない。それでも十分すぎるほど怖い。速い。硬い。強い。
しかも不気味なのは、人間を「敵」として見ているわけじゃないところだ。害虫を処理するような無機質さがある。人間側は知性と科学技術を持って火星に来ているつもりなのに、火星では人間の方が弱い。この逆転構造がBUGS2編の一番怖いところだと思う。
強いのに勝てない、だから絶望する
ここで大事なのは、BUGS2のメンバーは決して弱くないということだ。むしろ強い。
- ▶ 小町小吉 ─ オオスズメバチ
- ▶ ドナテロ・K・デイヴス ─ パラポネラ
- ▶ 張明明 ─ ハナカマキリ
- ▶ ティン ─ サバクトビバッタ
- ▶ ゴッド・リー ─ ミイデラゴミムシ
- ▶ 蛭間一郎 ─ ネムリユスリカ
- ▶ ヴィクトリア・ウッド ─ エメラルドゴキブリバチ
普通の人間相手なら反則級のラインナップだ。実際、小町・ティン・ドナテロはテラフォーマー相手にも戦える。でも勝ち切れない。敵の数が多い。火星という環境が厳しい。情報が足りない。人間側にも裏の思惑がある。強い人間を送り込んでも足りない。この絶望感がBUGS2編の核心だ。
人類側の裏切りと本多晃
BUGS2編は「人類 vs ゴキブリ」だけじゃない。人間側にも裏がある。特に重要なのが本多晃だ。バグズ2号計画に関わる技術者で、テラフォーマーを駆除対象として見るだけでなく、その力を利用しようとする側の人物。蛭間一郎やヴィクトリア・ウッドの動きとも絡んでくる。
つまり火星での敵はテラフォーマーだけじゃなかった。人間側も国や個人の思惑で動いていた。この構図はANNEX1編、地球編へとそのまま続いていく。『テラフォーマーズ』って、ゴキブリが強い漫画ではあるんだけど、それ以上に人間側がかなり怖い漫画なんですよ。BUGS2編の時点で、もうそれが全開になってる。
ドナテロ・K・デイヴスの存在感
BUGS2で特に印象的なのが、艦長のドナテロ・K・デイヴスだ。後のミッシェル・K・デイヴスの父である。
手術ベースはパラポネラ。作中でも非常に強力な昆虫ベースとして描かれていて、BUGS2の中でも屈指の戦闘力を持つ。艦長でありながら前線でも非常に強い。この人がいると「まだなんとかなるかも」と思わせてくれる安心感がある。
でも、BUGS2編はその安心感すら壊してくる。ドナテロは最終的に命を落とす。そして彼の存在は、後のミッシェルへとつながっていく。公式でも、ミッシェルがBUGS2艦長ドナテロの娘であることが整理されている。
ティンの最後が熱い
BUGS2編でかなり印象に残るのがティンだ。タイ出身のムエタイ使いで、手術ベースはサバクトビバッタ。人為変態すると脚部が発達し、バッタの脚力とジャンプ力を獲得する。しかも本人がムエタイの達人なので、脚力と格闘技の相性が抜群だ。単純な戦闘力で言えば、BUGS2の中でもかなり上位だと思う。
ただ、ティンの良さは強さだけではない。最後まで冷静で、小町たちを導くような役割もある。火星で次々に仲間が死んでいく中で、彼の存在はかなり大きい。
ティンの最期は、BUGS2編の中でも特に熱い場面だ。絶望的な状況の中でも、人間側の意地を見せてくれるキャラである。
蛭間一郎は、最初からしぶとい
蛭間一郎もBUGS2編では重要だ。後に日本の総理大臣になる人物だが、この頃はまだ18歳。手術ベースはネムリユスリカ。この能力がかなり特殊で、極端な環境に耐える能力を持つ生物だ。
蛭間は正面から敵を殴り倒すタイプではない。でも、とにかく生き残る。頭も回る。根性もある。汚いこともできる。この「生存力」が蛭間の本質だと思う。
BUGS2で生き残ったのは小町小吉と蛭間一郎の2人だけ。後の物語を考えると、この2人が生還した意味はかなり大きい。
BUGS2の結末
BUGS2は、ほぼ壊滅する。15人いた乗組員のうち、生還したのは小町小吉と蛭間一郎のみ。作戦としては明らかに失敗だ。
ただ、この失敗は後の物語の土台になる。小町は火星の地獄を知る男として、20年後のANNEX1計画で艦長になる。蛭間は地球で政治の道に進み、後の大きな展開に関わっていく。奈々緒、張明明、ティン、ドナテロたちの存在は、後の燈やミッシェル、さらにはテラフォーマー側の能力にもつながっていく。
つまりBUGS2編は、単なる過去編ではない。ここで起きたことが、後のANNEX1編の地獄をさらに深くしている。
BUGS2 登場人物まとめ(手術ベース・役割一覧)
後で読み返して思い出せるように、人物ごとに整理する。主要人物は厚めに、出番が少ないメンバーは能力と役割が思い出せる程度で。
主要人物
BUGS2編の主人公。幼なじみの奈々緒を失った原点を持ち、20年後のANNEX1編では艦長として再び火星へ。オオスズメバチの攻撃力と格闘能力の組み合わせが強烈。蛭間とともに生還した2人のうちの1人。
生還 ANNEX1へ続く小町の幼なじみ。ヒロイン枠に見えるが、火星到着後に能力を十分に使えないまま死ぬ。この展開でBUGS2編の残酷さが確定する。後の主人公・膝丸燈にも関わる重要人物。
死亡 燈と関係後の日本総理大臣。BUGS2時点では18歳。正面戦闘向きではないが、生存力と頭脳が異常。本多晃の計画にも絡みながら最終的に小町と生還。後の政治パートへつながる超重要人物。
生還 政治パートへBUGS2の艦長。ミッシェル・K・デイヴスの父。パラポネラの怪力で最上位クラスの戦闘力を誇る。この人がいると「まだなんとかなるかも」と思わせるが、最終的には命を落とす。
死亡 ミッシェルの父BUGS2の副艦長。中国出身。後の主人公・膝丸燈の華蟷螂能力につながる重要人物。ANNEX1編の劉翊武とも関係があるため、ここで名前を覚えておきたい。
死亡 燈の能力源タイ出身のムエタイ使い。バッタの脚力とムエタイの蹴り技の相性が抜群で近接戦闘はかなり強い。最後まで冷静で、絶望的な状況でも人間側の意地を見せてくれる。最期の場面は熱い。
死亡南アフリカ出身。テラフォーマーを操る非常に特殊な能力を持つ。人間側の裏を感じさせる人物で、本多晃の計画に関与。ただし能力が通じない相手もあり万能ではない。
死亡イスラエル出身。掌から爆発的な攻撃を放つ、攻撃性能が高い能力。名前のインパクトも含めてBUGS2の中では記憶に残りやすいキャラ。戦況は覆せず火星で死亡。
死亡その他のBUGS2メンバー(手術ベース一覧)
| 名前 | 手術ベース | 特徴・覚え方 |
|---|---|---|
| マリア・ビレン | ニジイロクワガタ | 15人の一人。派手な見せ場は少ないが、能力ベースとして押さえておきたい。 |
| テジャス・ヴィジ | メダカハネカクシ | インド出身。ガス噴射による高速移動系の能力。 |
| ジャイナ・エイゼンシュテイン | クロカタゾウムシ | カザフスタン出身。防御性能が高い昆虫ベース。後に同系統の能力が厄介な形で出てくる。 |
| トシオ・ブライト | オニヤンマ | トンボ系。飛行・動体視力方面のイメージで覚えておくと後々わかりやすい。 |
| ルドン・ブルグスミューラー | マイマイカブリ | 酸を使う能力につながるベース。後の展開で活きてくる。 |
| ジョーン・ウェルソーク | ゲンゴロウ | 水中活動に関係する能力として整理しておくとよい。 |
| 陽虎丸(ヤン・フワン) | オケラ | 中国系。掘る・泳ぐ・走る・飛ぶと多芸な昆虫ベース。 |
BUGS2計画関係者
バグズ2号計画に関わる技術者。テラフォーマーの力を利用しようとする人類側のきな臭さを象徴する人物。蛭間・ヴィクトリアの動きとも絡み、BUGS2編を「サバイバルだけではない話」にしている。
BUGS2計画の背景にいる重要人物。この時点ではまだ全貌は見えないが、ニュートン一族や後の大きな伏線を考えると非常に重要。名前だけでも覚えておきたい。
BUGS2編まとめ
BUGS2編は、『テラフォーマーズ』の原点だ。バグズ手術を受けた15人が火星に送り込まれ、ほぼ壊滅。生き残ったのは小町と蛭間の2人だけ。作戦としては完全に失敗している。でも、この失敗が後のすべての土台になる。
- 小町はANNEX1の艦長として再び火星へ向かう
- 蛭間は政治の世界へ進み、後の大きな展開に絡んでくる
- ドナテロの能力と血はミッシェルへつながる
- 奈々緒と張明明は後の主人公・膝丸燈と直接つながる
- BUGS2メンバーの能力は、後にテラフォーマー側の脅威としても現れる
- 人類側のきな臭さは、BUGS2編の時点ですでに全開
久しぶりに読み返すなら、まずBUGS2を押さえておかないと後のANNEX1編がかなりぼやける。ここを読んだだけで、ANNEX1編の登場人物の重みがかなり変わってくるはずだ。
- 01BUGS2編 ── 小町小吉・蛭間一郎・ドナテロ・ティン・奈々緒を整理
- 02ANNEX1編 前半 ── 火星帰還から20年後、ANNEX1計画の始動
- 03ANNEX1編 中盤 ── 各班が分断される死闘を整理
- 04ANNEX1編 後半 ── 第4班の裏切り、人間同士の戦い
- 05ANNEX1編 終盤 ── 通信作戦、燈の覚醒、九頭龍の登場
- 06ANNEX1編 最終盤 ── 火星大戦の終結と戦士たちの帰還
- 07地球編突入 ── 地球にすでにテラフォーマーがいた
- 08地球編中盤 ── 日本侵食、神奸達、小吉を巡る戦い
- 0923巻時点の勢力図と未回収の謎
- 10登場人物・強さランキング TOP20(個人考察)
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